博士進学のメリット・デメリット

博士進学のメリット

こんにちは。化学系博士課程のshuheiです。

 

「もうすぐ就活の時期だけど、博士に進学するかどうか決められない・・・」

「博士に進んだら、就職に不利になるんだろうか・・・」

 

私は、もともと博士進学を決めていたわけではなく、就活が始まる直前まで悩んでいました。

ここでは、博士進学のメリット・デメリットについてまとめた上で、

なぜ博士を選択したかご紹介しようと思います。

博士に興味を持っておられる学生の方に、参考になれば幸いです。

 

 

博士進学のメリット

(0) アカデミアへの道が開ける

これは当たり前ですね。

将来的にアカデミアを目指す(大学に残る)のであれば、博士号取得は第一関門です。

ただ、アカデミアを目指すことが決まっているなら、悩まれることはないと思います。

ここでは、博士取得後の進路は決めていないor就職するつもりである人を対象にしたいと思います。

 

(1) 心ゆくまで研究に没頭できる

やはりこれが一番大きいと思います。

先行研究を調べ、テーマを設定し、実験・解析を経て論文を書く。

この"研究のプロセス"を経験するためには、博士に進むしかありません。

たまに修士でもまとまった結果を出せる人もいますが・・・

 

授業・就活などがあるとどうしても時間を取られてしまいます。

博士では授業なども少ないため、自由度の高い状態で研究活動に没頭できます。

 

(2) 研究遂行能力を磨ける

修士までは教授から与えられたテーマに取り組んでいる方が多いのではないでしょうか。

博士では、テーマの設定から自分で行います。

先行研究を徹底的に調べ上げた上で課題の本質を見抜き、実現可能な範囲でテーマを立てます。

私は、このプロセスこそ、研究で最も大事な部分だと思っています。

そしてこれは、企業研究においても同じです。

与えられた問題を解く力よりも、自ら問いを立てられる力が求められるわけですね。

 

それ以外にも博士課程では、論文執筆国際学会での発表、企業や他大学との共同研究など、修士では取り組みにくい多くの経験ができます。

こういった経験から得たプレゼン力、語学力、コミュニケーション能力は、今後の人生で必ず役に立ちます。

 

(3) 研究職への就職に有利

これは企業にもよりますし、意見が分かれるところかとは思います。

ただ、私個人の経験としては、博士に進むことによって、就職活動が有利に進められたと考えています。

 

以前は博士に対して「頭が固くて企業で使いにくい」といったマイナスイメージもあったかもしれませんが、

今では博士を高く評価する大手企業が増えています。

実際に、化学系大手企業の博士選考は年々早期化しており、むしろ”優秀な博士の取り合い”という状態だと思います。

shuheichem.hatenablog.com

 

特に基礎研究を重視している企業は博士を多く採用しています。

逆に言うと、「将来企業で研究開発職に就きたければ、博士に進んだ方が配属の確率は高まる」のです。

 

(その他)

・博士という称号

「実は私、博士なんです!」と親戚に自慢できるだけではないメリットがあります。

それは海外の方と関わる時です。

海外では日本と博士への認識が異なり、研究をする上では必須、と考えられています。

博士号を持っていないと、話さえ聞いてもらえないこともあるといいます。

企業でグローバルに活躍するには、実は博士号が非常に重要なのです。

 

・将来について考える時間になる

修士の方の中には、

「日々の実験・報告に追われていて、気づいたら就活の時期になっていた・・・!」

という方もいるのではないでしょうか。私もそうでした。

そんな慌ただしい中で、これから数十年務めることになる企業を決めるのは大変です。

修士課程は研究に専念し、博士課程では将来についてじっくり考えることで、

後悔のない決断ができるかもしれません。

 

博士進学のデメリット

(1) 経済的問題

それではデメリットは何があるでしょうか。

まずはお金の問題です。

博士では修士までと同じように学費が発生しますし(免除制度の利用は可能です)、

家賃や食費といった生活費も必要です。

 

それでは世の博士の人はどうやってやりくりしているのかというと、

日本学術振興会(通称:学振)の特別研究員制度

・各種奨学金

・TA・RA

・その他アルバイト

などが収入源です。

 

学振が取れれば月20万円貰えるのでお金の問題はほぼなくなりますね。

ボーナスや福利厚生は全く無いので社会人とは比較になりませんが、

贅沢しなければ問題なく暮らしていけます。

ただ倍率は5倍程度と高いです。

(学振対策に関する記事も今後書こうと思います。)

学振が取れなかった場合は、それ以外の手段を組み合わせて乗り切ることになります。

 

(2) 研究のしんどさ

私は研究が好きで博士に進んだわけですが、

やはり好きでやっていても大変なことはたくさんあります。

・予想していたデータが得られず時間を浪費してしまった時

・データの解釈に行き詰った時

・論文や書類の締切に追われている時

などなど・・・

数年前まで研究なんてしたことなかった人間が、

一からテーマを立ち上げて遂行し、世界中の競合研究者たちと戦うのですから、

簡単なことではありません。

 

そういった問題が発生したり挫折を経験したときに、

沈み込んでしまうタイプの人は、もしかしたら博士に向いていないかもしれませんね。

問題が出てきたらそれを工夫して解決することを楽しんだり

自分なりの余裕を持っていられる人は強いです。

 

(3) 年齢

これも結構気にする人は多いと思います。

博士課程を終えるころには、30歳近い年齢になります。

学部卒や修士卒で就職した人は会社で活躍し始め、

結婚・子育てと人生の階段を上がっていきます。

そんな人たちを見ていると「自分の人生これでいいのだろうか・・・」と思うこともあります。

 

大学・研究室にもよる

博士課程の過ごし方は、大学や研究室によってもかなり変わってきます。

というのも、博士論文執筆のために必要な論文数の規定が、大学によって異なります。

1本でよいところもあれば、5本必要というところまで・・・。

 

また、研究室によって、論文の出しやすさも変わってきます。

研究分野的に論文が書きやすい分野とそうでない分野があります。

また、教授の方針で、質の高い研究でないと論文化しないという方もいれば、どんどん数を量産していく方もいます。

博士に進む予定の大学・研究室の状況は詳しく把握しておきましょう。

 

参考にした本

すでに書いたように、一口に博士といっても状況は人によってだいぶ異なります。

周りの人から情報収集するといいですが、自分は下のような本も参考にしました。

 

「指導教官の選び方」「資金の獲得方法」など、あまり教えてくれないノウハウについて書かれていて参考になりましたね。

 

 

こちらは逆に、企業での基礎研究がうかがい知れる本。

IBMの研究所で所長を務めた方が書かれています。

企業の様子を知るのも、公開のない選択のためには重要だと思います。

 

まとめ

私が考える博士進学のメリット・デメリットをご紹介しました。

ただ、最終的に決断するのは自分です。

重要なのは、メリット・デメリットを把握したうえで、自分の価値観で決めることです。

価値観は人それぞれですし、しっかりと自分に向き合って決めれば、後悔もないはずです。

 

自分について知り、将来を考える上では、就活でもよく行われる自己分析が有効です。

 

shuheichem.hatenablog.com

 

一人で悩んでいるとなかなか答えが出ないので、周りの先輩や教員ともよく相談してくださいね。

この記事が決断するときの何かのヒントになれば、幸いです。