おすすめ本:『目の見えない人は世界をどう見ているのか』障害者と対等になるための身体論

こんにちは。化学系博士のshuheiです。

今回は最近読んだ本について。

本屋さんで見かけるこちらの本です。

 

 

もともと生物学者を目指しており今は"美学"が専門である著者がインタビューを行った結果から、

視覚障害者に特有の世界のとらえ方を分析します。

常識を覆されるような、ハッとさせられる瞬間が多く、すぐに読み終えることができました。

障害者と共生するための画期的な手がかりが示されています。

 

 

福祉についての本?

著者は、本書を福祉関係の本ではなく、視覚障害者の身体論である、と前置きしています。

しかし、私は紛れもなく福祉の本だと感じました

もちろん、内容としては障害者の身体の使い方や、世界の認識の仕方が、生の情報源をもとにありありと解説されています。

ただ、著者の姿勢は非常に福祉的で、障害者とどう向き合うべきかという葛藤が感じられます。

そして、その答えの一つが、本文中でも述べられていますが、

障害者の身体の特徴に好奇の目を向け、おもしろがることなのです。

 

障害者の異常な感覚

視覚障害者が異常なまでに鋭い聴覚や嗅覚を持ち、視覚を補っているというのはよく聞く話です。

私も、この本を手に取った時は、そのような特殊な力について述べた本ではないかと想像しました。

しかし、それは間違いでした。

そもそもその鋭い感覚を「すごい」などと思ってしまっている所に、

対等でない立場が発生しています。

この本のタイトルはあくまで『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

目を使わなくても「見る」ことができるし、「読む」こともできるのです。

そのあたりの感覚が、詳しく解説されています。

 

対等になる事の難しさ

私自身、障害者と接する機会は多くなかったですが、

どうすれば共生が実現できるのかについてぼんやり考えることはありました。

障害者は社会において様々な困難に直面します。

その苦労の大きさは計り知れないため、

どうしても「気を使い、助ける」という構図になってしまいがちです。

 

対等になる方法

その一つの手がかりが、障害者の世界の見方に興味を持ち、面白がることなのです。

例えば、「視覚」障害者には「死角」がありません

目が見えないと視点が生まれないため、体の前か後ろか、という区別がなくなるのです。

これはさらに表と裏、内と外といった概念の消失にもつながり、

モノをそのままの形で認識するという特徴があるのです。

面白い、ですよね。

 

視覚障害者との共生と聞いて思い浮かべるのは点字や音声案内といったものですが、

これらはすべて情報を与えるという構図になっています。

もちろんこれも必要ですが、これだけでは対等な関係の構築が難しくなり、いつまでも心理的なバリアがあるままです。

これに対して、上述のように世界の違いを面白がる、というのはお互いの世界の境界を取り払ってのぞき見してみることです。

筆者はこのような意味的な関わり合いが重要であると考えているのです。

 

まとめ

これは障害者と対等になるための大きなヒントであり、私にとって発見でした。

こちらの世界に合わせるための情報の提供ではなく、

お互いの世界を並列に比べてみて、共生の方法を探るということです。

ここに紹介できなかった数多くの興味深いエピソードがまだまだありますので、

ぜひ読んでみてください。